プロヴァンス滞在記

32.ビュークス (BUOUX) 2
現在の私たちの感覚からすると、
ビュークス一帯の、崖だらけで険しい土地は不毛のようにしか思えないのだが、逆に先史時代にはこのような前傾の崖・洞穴が多い地形は、生活するのに絶好の地であったようだ。 

実際に、ビュークス周辺では先史時代(旧石器時代・新石器時代・青銅器時代)の生活跡・生活用具・墓地等が数多く見つかっている。




中世の城壁

現在見られるビュークス砦はケルト・リグリア時代が起源。

これ以降、中世から近世にかけて、この地域の立地上の重要性と、防御上の有利さから、この砦は特別な役目を担うことになる。

リュベロンはヴァルドー派の拠点が多く、宗教戦争の頃には、砦はヴァルドー派の人々の避難所に使われた。
宗教動乱が比較的おさまっていた時期には、プロテスタントたちは周辺に散在したが、ルイ14世によるナント勅令廃止で、再びこの砦がプロテスタントの避難所にされた。
ルイ14世は1660頃に砦の破壊を命じた。

以後、この砦は放棄され、ビュークスの村はエーグブラン谷から離れた現在の位置に作り直された。

現存する村は18世紀中期以降に作られたものだ。

忍び階段
『忍び』と言うにはずいぶん立派な階段だ。




じつは私は、過去十二年間でこれだけ頻繁にビュークスを訪れているにもかかわらず、ビュークス砦(Fort de Buoux)を訪れたことが無かった。

砦は、谷から見上げて想像していたよりもずっと大きく、見所がたくさんある。 完全な廃墟のレ・ボー(Les Baux)よりも、ある意味面白いかもしれない。 何重にも作られた防御壁の跡、ロマネスク式礼拝堂の跡、岩盤をくりぬいて作った蛸壺のような貯蔵庫、脱出用の忍び階段、等々・・・。

岩場の先端には中世のドンジョン跡がある。 ケルト・リグリア時代が起源だが、多くの部分はガロ・ローマ時代の遺構だそうだ。 ここからの谷の眺めはとても素晴らしい。


岩盤をくりぬいて作られた、
蛸壺のような貯蔵庫の跡


それにしても、いつもクライミングしながら眺めていたビュークス砦、逆にビュークス砦からクライミングの岩場を眺めるのは とても感慨深いものがある。

じつに大きくて美しい。

こんな岩場がもし 日本にもいくつかあれば、私も道を踏み外さなかったのかもしれない・・・。 しみじみと感じ入るものがある。

( 2002/07/02 作成 )


岩場を眺めて物思いに耽る作者




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