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プロヴァンス滞在記 − 巡礼地にて −
9.サント・ボームの洞窟 (Grotte de la Ste-Baume)
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マルセイユの東30km、エクスの南東30km位にサント・ボーム山塊(Massif de la
Ste.-Baume)がある。
その東西に伸びた稜線の北側は断崖になっていて、岩壁下部では、南仏の強い日差しと乾燥から遮られた環境のためプロヴァンスでは極めて特異な植生が成立している。
落葉樹の巨木が鬱蒼と生い茂り、中世の中北フランスを連想させるような森林帯だ。
この珍しい植生はここが国有林となる遥か以前から、人々によって大切に保護されてきた。
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中央が洞窟。左上の稜線に見えるのが礼拝堂。
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サントボームの洞窟への遊歩道の入り口。
鬱蒼と茂った落葉樹の森は見事だ。
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サント・ボームの洞窟は、この山塊のほぼ中央に位置するサン・ピロン(St-Pilon)山の頂上直下にあり、マグダラのマリアが晩年瞑想生活を送った場所として知られている。
サント・ボームという名前自体がプロヴァンス語の『神聖な洞窟』が語源であり、それがこの山塊の名前の由来となったのだ。
マグダラのマリアは、他の聖人たちと一緒にサント・マリー・ド・ラ・メールに流れ着いた後、この洞窟で瞑想生活をおくり生涯を閉じたとされている。
瞑想生活中には、しばしば天使が訪れ、崖の上のサンピロン頂上までマグダラのマリアを運び、天国の音楽を聞いていたそうだ。
頂上のその場所には礼拝堂が建っている。
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洞窟への巡礼は5世紀頃には始まり、中世の巡礼ブームの時期には多数の巡礼者を迎え入れた。
しかしながら現在は、ミサが行われる時を除いては、洞窟だけを目的に訪問する人は少なく、往時の宗教的熱気はあまり感じられない。
むしろ、頂上までの道は散策コースとして素晴らしい環境のため、家族や友人同士で散歩がてら、ピクニックがてらで訪れる人たちが多く、週末には多数の家族連れに出会う。陽気な雰囲気だ。
南仏では珍しい落葉樹の巨木を仰ぎ見ながらの散歩は、とても気分がいい。
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サン・ピロン頂上の礼拝堂。
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洞窟の入り口
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洞窟は落石対策工事のため、1998年4月から2002年7月までの4年間、立ち入り禁止になっていた。
その際に入り口までの階段が広くきれいに整備し直され、工事前よりもかなり歩きやすくなった。
階段上部にある磔刑像が生々しい。ここまでのハイキング気分を戒めるように訪問する人々を見下ろしている。
洞窟の入り口は完全に壁に覆われ、まるで教会の入り口のような造りだ。
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洞窟内部は驚くほど広い。
薄暗く、静かな中に 水の滴る音が響く。
10年近く前、落石対策工事前に訪れた時は、洞窟内は感謝のプレートや松葉杖が多数あって、いかにも・・・と感じさせる巡礼地だったのだが、もうそういうのは流行らないのだろう。
工事後はきれいに撤去されている。
祭壇も新しく作られた物のようだ。祭壇の右脇には聖遺物が祭られている。
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洞窟内部。
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サン・ピロン頂上の礼拝堂のすぐ脇から崖の下に、
サント・ボームの洞窟を見下ろすことが出来る。
(落ちたり、落石を落とさないようにご注意を!)。
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ここは、平日は訪れる人も少なく、とても静かな巡礼地である。しかし、ここがフランスのカトリック史上、とても重要な場所であると思うと、逆に感慨深い。
以前に比べて洞窟内部は そっけなくはなったのだが、むしろ、ご利益より祈りを大切にする雰囲気が漂っている。
ここでミサが行われているときに一度訪問してみたいものだ。
(2004/11/15作成)
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