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プロヴァンス滞在記 − 巡礼地にて −
2.サンチャゴ・デ・コンポステラ (Santiago de Conpostela)
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サンチャゴはスペイン語で、大ヤコブのことだ。フランス語ではサンジャック、英語ではセントジェームズ。
コンポステラの語源は『星の野』と『墓地』の二通りの説があり、前者は物語性があって面白いのだが、実際に聖堂の地下からローマ時代の墓地が発見されている事から考えれば後者の説が妥当と考えるべきなのだろう。
フランスの大きな街では現在でもよくサンジャック通りを見かけるが、これと中世の巡礼は無関係ではない。
パリでも往時にはサンジャック広場を起点にし、このサンジャック通りを登って巡礼が旅立っていったそうだ。
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ステンドグラスに表現された聖ヤコブ
パリのクリュニー美術館にて。
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大聖堂とオブラドイロ(Obradoiro)広場
(またはスペイン広場)
とても巨大な大聖堂で、全体をカメラに収めるのが難しい。
オブライドロの正面入り口を入ってすぐ栄光の門がある。
ガリシアは天気の悪い日が多い。
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また、中世の巡礼は、それぞれが勝手に目的地を目指して気ままに歩くのではなく、身分、職業、性別、年齢によってグループになり、グループ毎にかたまってサンチャゴを目指したらしい。
これは当時は階級制度が明確であったのと、治安が良くなかったことによるようだ。
一人旅などは大変危険であり、巡礼といえども無事に帰ってこれる可能性は高くなかったのである。
巡礼中に生涯を閉じるのはたいへん名誉なことでもあったようだ。
巡礼者には犯罪人もいた。 当時ひとつの刑として、「サンチャゴ参りを命ずる」などというものがあったらしい。
彼らはサンチャゴで「お参りをした」という証明をもらって帰ってこなければならないのだが、偽の証明を途中で買って帰ってしまう者や、そのまま盗賊に成り果てる者も多かったようだ。
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サンチャゴ巡礼者の典型的ないでたちは
つば広帽子に裾長マント、肩にはずた袋、そしてホタテの貝殻を身につける。
ホタテ貝は本来このガリシア地方の特産品であったのがいつしか聖ヤコブの象徴になったようだ。
最盛期(12世紀から14世紀)には年間50万人とも100万人とも言われる人々がサンチャゴ巡礼に出かけたと言われている。
1140年頃に、おそらくクリュニー派の僧によって書かれたとされる『サンチャゴ巡礼案内』はヨーロッパ最古の旅行ガイドとして知られていて、当時のサンチャゴ巡礼の実情をうかがい知ることができる貴重な資料だ。
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栄光の門(Portico de la Gloria)のタンパン。
キリストを取り囲んで4人の福音史家と
アーキボルトに黙示録の24老人が並んでいる。
マテオ(Mateo)による12世紀の傑作彫刻とされる
写真には入っていないが支柱にも
預言者や使徒たちの像が並んでいる。
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中央祭壇(Alter Mayor)
中には13世紀のサンチャゴ像があるが、
天蓋と周囲の、あまりもの派手な装飾に圧倒されてしまう。
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そもそもの事の起こりは、9世紀初めに、スペインの西の外れのガリシア地方の、昔ローマ人の墓地があった場所で聖ヤコブの墓が「発見」されたという出来事に由来する。
肝心の遺骸はその後に行方不明になっているのだが、この「サンチャゴの墓の発見」と失地回復運動は当然関連付けて考えるべきだろう。
隣人愛を説いたキリストの最も初期の弟子でありエルサレムで殉教した聖ヤコブの墓が、数百年の時を越えてこの時期に、この地で発見され、レコンキスタ中は軍神と化し、ある戦場(クラビホClavijo)では実際に「出現」し回教徒を殲滅したとされている。
そのため、サンチャゴ・マタモロス(Santiago Matamoros:モーロ人殺しの聖ヤコブ)という聖人としては信じられないような異名までつくのだが、この一連の経緯は実に興味深い。
聖ヤコブはいつからかスペインの守護神ともなっている。また、『サンチャゴ』は戦いの際の必勝を期す掛け声ともなっていて、江戸時代の島原の乱でのキリシタン達も『サンチャゴ!』と叫びながら突撃をしたらしい。
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さて、ここまではサンチャゴ巡礼を斜めに見たが、現在のサンチャゴ巡礼は、より現代的にさまざまな心情や理由で行う人が多いようだ。
人生の目的を失った人や、心や体に傷を負った人、定年後に自分の人生を考え直す為、等々…。
足りない何かを見つけ出すきっかけとして、また『生きる事』の基本に立ち返るために、スペイン国内だけでも約800Kmの行程はちょうどよいのかもしれない。
また、全行程を一度にこなすのは難しいので、何回かのバカンスに分けて数年がかりでこなす人、自転車でゴールを目指す人等、スタイルもさまざまだ。
街道沿いには彼ら目当ての安宿も多く、温かく迎えてくれる。
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早朝にもかかわらず
多数の巡礼者がサンチャゴを目指して歩き出す。
あとわずかでゴールだ。
約60Km手前の巡礼宿にて。
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栄光の門の中央の支柱。
ここが巡礼のゴールだ。
皆が手を触れる場所には手形状の凹みができている。
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ゴールとなる大聖堂の栄光の門では…、辿り着いた巡礼者は中央の柱に手を触れる。
皆が触れるその部分には手形状の凹みが出来ていて歴史を感じさせる。
巡礼の達成感からか涙を流す者やただひたすら祈る者など、また、行程を同じにした者同士で喜び合ったり…、見る者に感動を与える場面が繰り広げられる。
千年以上もの間、日々続く光景である。
(2003/05/13作成) |
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